東方伝説獣 第1話 影

第一話 影



いったい何が起こっているのだろうか?何時も通りの、夜の狩りの帰り道。何時も通りに獲物を仕留め、何時も通りに里への帰り道を下り始めたはずだった。
「逃げぇ!逃げぇ!」
「足ぃ、止めたらあかん!走れぇ!」
「う、うわぁぁぁぁ・・・」
今いる仲間は3・・・いや、2人。一緒に狩りに来ていた狩人仲間は、みんなやられてしまった。あの、とてつもなく大きな、大きなあの化け物に。
「与兵ぇ・・・おまえの、おまえの能力で慧音先生をば、よべんのかい!?」
「馬鹿言え!あんな、でっけぇバケモノ、慧音先生でも手に負えんわ!」
「でも、このままじゃ、確実に食われちまう・・・俺は、食われんのは嫌じゃあ!」
そんなことをいったって、どうすればいいのか。あんな化け物、どうすることもできない。
今は、先ほど捕まったのであろう、仲間を食らっているのか追っては来ていないが・・・それも、時間の問題だろう。あの化け物はその、大きさの割に、実に早く、”飛ぶ”のだ。地面を這いずる人間になど、すぐに追いついてしまうことは想像に難くない。
・・・なら、このまま逃げていいのだろうか?必死に走れば、人里にはつくかもしれない。
でも、その後は?あの化け物が追ってきてしまったら?・・・考えたくもない。
嫁のお梅や娘のたえ。おっかぁに、慧音先生。山の上には博麗の巫女様だっている。そんな、自分の大切な人たちや、この幻想郷にとって大事な人たちのいるところにあの化け物を連れていくのか・・・?
「な、何しとるんじゃ与兵!はよぅ、はよぅ、走れ!」
「・・・できんのじゃ!わしらが人里に走れば、あの化け物もついてくる!わしだって、食われるのは嫌じゃ!でも、嫁や!娘や!他の皆が食われるのはもっと嫌じゃ!」
「わ、わしだってそうじゃ!でも、食われるのは・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ・・・・!」
来た。ついに来た。あの化け物だ。でも、逃げるわけにはいかない。俺はここで食われる。人里の場所を知られるくらいなら、ここで食われる。
あぁ、でも、あいつの存在をどうにかして、人里に伝えなければ・・・でも、どうやって・・・
「・・・!ハハ!せや、わしの能力は助け呼ぶためのもんと、ちゃうんや!」
俺の能力。いつも、いつも、妖怪に襲われた時に人里から助けを呼ぶのに使っていたが、そうだ。あれを使えば人里に、あいつのことが伝わる。断片かもしれないが、少なくても、注意を促すくらいはできる!
「皆、聞いてくれ!」
俺の能力は、”声を届ける程度の能力”。この能力で俺は、離れたところにいる生き物に自分の声を届けることができる。そして、今は、届ける生き物を、人里のすべての人に!
「狩人の与兵じゃ!声届けの与兵じゃ!」
化け物が旋回するのが見える。あまり、時間はない。
「わしらは、もう人里には、戻れん!でも、助けに来たら、あかん!」
化け物がこちらを向いた。そのまま、加速し、その口で、俺を飲み込むのだろう。
「鳥や!鳥や!化け物みたいな鳥や!鳥や!」
でも、何故だろう。恐怖は、ない。もう、眼前に化け物の口が迫っているというのに。
「・・・・すまんのぅ。お梅。」
最後にそう呟いて、俺は食われた。






「はぁ?でかい鳥の化け物?なによそれ。」
「そうだぜ。なんでも、腕利きの狩人が5人も食われたって話だぜ。」
博麗霊夢はその噂に半信半疑だった。狩人が、夜の森に狩りに出て食われることは多くはないが、起こらないわけではない。
しかも、魔理紗の話では、その鳥は山のように大きい鳥であったとの噂である。いくら幻想郷では常識は投げ捨てるものと言っても限度がある。
それに、
「馬鹿らしい・・・大体そんな鳥、今まで見たことないわよ。仮に外から来たんだとしても、そんな危険そうなもの、あのスキマ妖怪がほおっておかないわ。」
「あくまで噂だぜ。私だってそこまで信じてるわけじゃないさ。でも、狩人の最後の声が、鳥!だぜ?少なくても、何かはいると思うんだぜ。」
「どちらにしても、私の出る枠ではないわね。」
そう、博麗の巫女はあくまで、”人と妖怪の調停者”であり、”異変解決人”だ。その、博麗の巫女が不確定な情報で行動するなど、もっての他だ。
加えて今は、このお茶を飲むことに忙しい。霊夢にとってお茶の時間は何物にも優先したいものなのだから。
「つれないんだぜ。」
「そうですよ!霊夢さん!一大事だったらどうするんですか!」
魔理紗はつまらなさげに肩をすくめたのだが、隣にいた早苗は更に声を荒げた。
早苗が声を荒げるのは珍しいことではないが、ここまで真剣なのは珍しい。いつもなら、”常識にとらわれないモード”とも言える状態になっていることが多いからだ。
何が違うかと具体的に言うと、目が正常である。ぐるぐる目玉にはなっていない。今は通常モードでの運行のようだ。
「もし、その大きな鳥がギャオスだったら大変です!人里が襲われる前に発見して退治しないと!」
「・・・ぎゃおす?なによそれ?魔理紗、知ってる?」
「知らないのぜ。早苗が好きな特撮映画のキャラクターかなんかじゃないか?」
「え?皆さん知らないんですか?ギャオスというのはですね・・・」
早苗の話のよると、ギャオスとは昔に本当に日本を襲った、所謂、”怪獣”の一種らしい。
全長は最大のもので○○mもあり、その大きさに似合わずに空中での動きは俊敏であるとのこと。更に、肉食で人間を好んで捕食する性質を持つ上、繁殖力が非常に高く、日本で目撃されて以来、またたく間に世界中にその生息圏を広げたんだそうだ。早苗がこちらにやってくる前には毎年、たくさんの人が被害にあっていたらしい。
「・・・ですから、その鳥がギャオスだったら大変です!こっちにはガメラもいないのに・・・」
「ガメラ?なによそれ?」
「?ガメラは、ガメラですよ?」
「・・・まぁ、いいわ。でも、それなら大丈夫よ。」
「む?霊夢。どう言うことなんだぜ?」
「簡単よ。あんたたち、こちら側に流れてくるものの条件は何だった考えてごらんなさい。」
「スキマ妖怪の仕業だぜ。」
「スキマの仕業ですね。」
自信満々に答える魔理紗。横の早苗もうんうんと頷いている。・・・霊夢はちょっとだけだが、今度会ったら紫にやさしくしてやろうと思った。別にかわいそうだと思ったわけではない。ただ、ふと思っただけだ。
「~~~それもあるけど、もう一つの方よ。紫の絡まない方ね。」
「・・・・あ。」
「確かに、それなら心配なさそうなんだぜ。」
幻想郷とはこの魑魅魍魎跋扈するこの土地一帯・・・いや、むしろ一つの世界とも言うべきこの場所を指す名前である。
はるか昔、この地は妖怪と人間が普通に暮らす、普通の土地であったのだが、世の人間が科学を発展させ、闇を恐れなくなり、更に幻想を否定し始めたことにより力を失い始めた妖怪たちの未来を憂いた妖怪の賢者、八雲紫が作り出したものが、この幻想郷である。
幻想郷は二つの巨大な結界、すなわち、外界と幻想郷を遮断する博麗大結界、外界の非常識を幻想郷の常識と為す、幻と実体の結界に覆われている。そして、霊夢の言う話に関係のあるのは幻と実体の結界のほうだ。
幻と実体の結界は、常識、非常識の変換のほかに、外界で忘れ去られたもの、すなわち外界で幻想に至ったものを幻想郷へと引き寄せる働きを持つ。その働きにより、幻想郷へは外界から妖怪が引き寄せられ、幻想郷のバランスを保つことになっている。
「その、ぎゃおす?かしら?それ、外界では相当大きな話題になったんでしょ?」
「あ、はい。連日、新聞なんかもギャオスの話題でいっぱいでした。」
「新聞とは、あまり信用できないな。嘘が交じってそうだぜ。」
「魔理紗、それは今関係ないわ。確かに信用はできないけどね。・・・まぁ、それは置いておいて、そこまで大きな話題になったのなら、忘れされれることなんてそうそうないわ。大方今回のも、血の気の多い妖怪の仕業でしょ。」
「・・・たしかに、言われてみればそんな気もしますね。」
「でも、それならその妖怪を退治するのが博麗の巫女の仕事じゃないのか?」
そう言って、魔理紗はお茶を飲む霊夢にジト目を送った。相変わらずのんびりとしていて、梃子でも動きそうにない。
「いやよ、めんどくさい。それに、万が一そのギャオスだったら私が危ないじゃない。」
「・・・こいつ、やっぱり怠惰巫女なんだぜ。」
「それに、」
「?なんですか?」
「なんか、なんとかなる気がするのよ。何となくだけど。」
もし、その大きな鳥が外界で暴れたその、ギャオスであっても何とかなる。霊夢はなぜなのかは分からないが、そんな気がしていた。しかし、ただの勘ではない。幻想郷の博麗の巫女の勘なのだ。下手な予言よりも信じるに値するほどの的中率がそこにはある。
「また、霊夢の勘か。・・・なまじ、当たるから困るぜ。」
「まぁ、霊夢さんがそういうなら・・・」
そういって、3人の話は他のことに移って行った。幻想郷に入り込んだものの正体も知らずに。これから、この幻想郷がどうなっていくかも知らずに・・・












――――彼はずっと眠っていた。
――――はるか昔から、ずっと昔から
――――ずっと、同じ場所で眠っていた。
――――けれど、彼は感じている。己の倒すべきものを。己の果たすべき使命を。
――――そう、目覚めは近い。彼の同族がいる世界とは近くて遠い、この美しい世界を守るために――――







あとがき

なんか、始めたよこの人。みなさん、こんにちわ。漆黒です。ちょっち、何か書きたくなりまして・・・そんなわけで、幻想入りの小説です。プロットは出来上がってるんでちまちま書いていきます。まぁ、需要があるかは知りませんが・・・とりま、誤字脱字はチェックしているんですが、見逃しがあったら教えてください。いそぎ、修正しますので。では、今回はこれで。あでゅー。




いあ!いあ!あとらっくなちゃ!





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漆黒@銃剣士

Author:漆黒@銃剣士
千葉のTCGプレイヤー。最近はボードゲーマーにクラスチェンジ気味。

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